INTERVIEW / 飲料・食品
アサヒ飲料株式会社
会員数約3.5倍、リピート率は11%へ。清涼飲料水のプロが挑む「体験型D2C」を、事業成長に合わせて拡張し続けるメルカートの柔軟性
アサヒ飲料は、ウイスキー樽で熟成させたコーヒー豆のD2Cブランド「DEVIL’s GIFT」をメルカートで展開しています。事業の成長に合わせてサイトを拡張し、会員数約3.5倍、リピート率11%を実現した背景を伺いました。

| 企業名 | アサヒ飲料株式会社 |
| サイト名 | DEVIL’s GIFT | デビルズ・ギフト オンラインストア |
| 業種 | 飲料・食品 |
| 取り組んだ課題 | 顧客体験(CX)向上データ活用/CRM |
あえて手間を委ねる「豆」を売る理由
私たちアサヒ飲料は、自動販売機やコンビニエンスストアの棚に並ぶ「清涼飲料水(RTD:Ready To Drink)」を通じて、喉の渇きを潤す手軽な美味しさを提供してきました。しかし、この「DEVIL’s GIFT」は、あえてその真逆をいく「お客様に最後の手間を委ねる」商材です。
きっかけは、研究所のコーヒー開発チームにいた頃に遡ります。ウイスキーの樽で熟成させ、芳醇な香りを移したコーヒー豆。その圧倒的な個性に魅了されましたが、これを液体として飲料化し、量販店で展開するには大きな壁がありました。樽熟成は一度に作れる量が限られており、何万ケースという規模で展開する飲料ビジネスには物理的に乗りにくかったんです。
また、単なる「飲料」としてではなく、コーヒー豆の袋を開けた瞬間から広がるウイスキーの香りや、丁寧に淹れるプロセスそのものにある「ロマン」を伝えたい思いもありました。だからこそ、ウイスキーの「情緒や熟成文化」を主軸に据えたブランド設計を行いました。アサヒグループが持つお酒の強みを活かし、「夜の余暇時間を贅沢にする」という新しい飲用体験を提案するというニッチな市場を切り拓くことに決めました。
1300%の支持から確信した、D2C(EC)という必然性
この商品は、量販店の棚に並んでいるだけでは選ばれません。100gで2000円を超える価値を、納得していただくためのブランドに込めた物語の共有が必要でした。既存の飲料ビジネスはいかに認知を高め、手に取りやすい場所へ置くかという戦いですが、「DEVIL’s GIFT」が求めたのは、お客様と一対一で向き合い、ブランドの背景にある熱量を直接届けることでした。
そのため、販売チャネルはEC(D2C)に絞り込みました。ECサイトは単なるレジではなく、ブランドの世界観を醸成するための「聖域」であるべき。上質なバーにいるような感覚や、ウイスキーの琥珀色を連想させる重厚なトーン。そうした、既存の「飲料メーカーのサイト」とは異なる尖った表現を、妥協なく形にする必要がありました。
先行して実施したクラウドファンディングでは、目標金額の1300%という驚異的な達成率を記録しました。ここで得た確かな手応えと、お客様からの「世界観への共感」という声を100%具現化するために、私たちはEC自社サイトの構築へと踏み出しました。
メルカート導入の決め手はセキュリティの堅牢性と、表現の自由度
自社サイトを構築するにあたり、私たちが重視したのは「ブランドの世界観を守り抜ける自由度」と「大手企業としての信頼性」の両立でした。多くのSaaS型カートは、効率を重視するあまり、デザインや構成に制約が生じがちです。しかし、メルカートは違いました。SaaSとしての機動力を持ちながら、独自のブランド表現を細部まで形にできる表現の幅の広さを併せ持っている。私たちの緻密なブランディングを、システムの制約に縛られることなく実現できると直感したのが導入の大きな理由です。
また、セキュリティについても、インフラの堅牢性という面で、数多くの大手企業の実績を持つメルカートは、社内の意思決定をスムーズにする大きな後ろ盾となりました。こうして、「DEVIL’s GIFT」という繊細なブランドを預ける「器」として、メルカートを選定しました。
事業成長のスピードに合わせて形を変えられる「乗り換えない」拡張性
2024年のスタート当初、私たちのサイト構成はかなり異例だったと思います。取り扱う商品はわずか2種類でした。そのため、あえて「商品一覧画面」を設けず、トップページから直接商品詳細ページへ誘導する、1枚のLP(ランディングページ)に近い構成から始まりました。まずはスモールにスタートし、市場の反応を見極めながら少しずつ形を変えていきたいという戦略的な意図があったからです。
驚いたのは、その後の拡張の速さでした。ラインナップが増え、ドリップバッグなどの新商品を追加したタイミングでも、サイトの再構築やシステムの乗り換えといった手間は一切発生しませんでした。メルカートに標準で備わっている機能を有効化し、テンプレートを調整するだけで、シームレスに本格的なECサイトへと姿を変えることができたのです。
事業のフェーズに合わせて無駄な投資を抑えつつ、必要なタイミングでサイトを成長させ続けられるメリットは計り知れません。大規模な改修を挟むことなく、ビジネスの歩調に合わせて柔軟にサイトの役割を変化させていく。まさにシステムが事業の足かせになることなく、私たちの挑戦を支える伴走者として機能してくれました。
専門知識という壁を越え、自分たちの手でブランドを育てられる喜び
私たちのチームはECの専業集団ではありませんし、私自身も、本来はマーケティングや開発の人間であり、HTMLを直接叩くエンジニアでもありません。しかし、「DEVIL’s GIFT」というブランドは、自分たちの手で育てたいという強い想いがありました。
サイト運営においては、あらかじめ整えられたテンプレートを活用することで、コラム(アクマガジン)の更新や新商品の追加を自分たちの手で完結させています。これまで外部に依頼して数日かかっていた更新作業が、自分たちの操作だけで数分で完了する。このスピード感があるからこそ、SNSのトレンドやファンの声に即応した「生きた運営」が可能になりました。
また、サポート体制も「共創」の質を高めてくれています。相談を投げれば、私たちのこだわりを理解した上で「それならこの機能をこう使いましょう」という具体的な解決策を提案いただける。この安心感があるからこそ、私たちはブランドの価値を磨き上げるクリエイティブな業務に集中できています。大手企業の新規事業として、限られた人数でスピード感を持って運営する上で、この自走できる仕組みは不可欠なものでした。
会員数3.5倍やリピート率増加を実現させた世界観とデータの相乗効果
徹底した世界観の追求と、それに基づいた機動的な運用。その成果は、明確な数字として現れました。運用開始から約1年で、会員数は当初の約3.5倍にまで急増。購入者アンケートでも「ブランドコンセプトへの共感」が購入理由の最上位となり、私たちの情緒的な訴求が確実に「ファン化」に繋がっていることが証明されました。
データ分析に基づいた具体的な施策も、着実に実を結んでいます。昨年10月から本格的に開始したメルマガ配信では、それまで数%程度だったリピート率が、11%にまで向上しました。これは、単に商品を売るだけでなく、お客様と継続的にコミュニケーションを取れるCRMの基盤が整っていたからこそ成し遂げられた成果だと感じています。
ターゲットの拡大においても大きな手応えがありました。当初は男性向けの「キャンプ・外飲み」のシーンを中心に訴求していましたが、購入データを詳細に追うなかで、ターゲットを「家での自分時間」を大切にする女性層にも広げました。サイト内のビジュアルや広告を柔軟に切り替えることで、実際に女性の新規ユーザー獲得にも成功しています。ブランドの軸をぶらさず、データに基づいてターゲットを最適化できる運用の自由度が、この成長を支えています。
ECを起点に、さらなる「飲用体験」の深化へ
現在、「DEVIL’s GIFT」はテストマーケティングの最終段階にあり、2027年以降の本格的な事業化に向けたロードマップを描いています。今後は、SKU(商品数)のさらなる拡充はもちろん、ユーザー行動分析をより深掘りしていきたいと考えています。
具体的には、ヒートマップなどの分析ツールも活用し、サイトに来ていただいたお客様がどこに惹かれ、どこで迷っているのかを精緻に把握することで、より「実店舗の接客に近い」体験をデジタル上で提供したいと考えています。また、CRMの自動化や定期便の導入など、メルカートの機能をさらに使いこなしていくことで、24時間いつでも「最高の接客」ができるサイトへと進化させていく予定です。ECを単なる販売の場に留めず、ブランドを深化させる拠点として活用していきます。
ブランドの世界観を磨き、着実に成長させるための「器」選びを
最初から100点の完成形を目指す必要はない、というのが私たちの実感です。大切なのは、譲れない「世界観」をしっかりと持ち、それを実現できる柔軟なパートナーを選ぶことです。
私たちのような少人数のチームこそ、システムで解決できる事務作業を極限まで削ぎ落とし、「ブランドをどう磨くか」というクリエイティブな業務に集中すべきです。そのためには、自分たちが本来やるべき仕事に注力させてくれる、無理のない運営基盤が不可欠です。システムに振り回されるのではなく、自分たちのブランドを共に育ててくれる「器」を選ぶこと。それこそが、ニッチな市場で熱狂的なファンを作り、ブランドを着実に拡大させる最短ルートだと確信しています。
▼ 本事例でご紹介したECサイトはこちら 「DEVIL’s GIFT」公式オンラインショップ
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