COLUMN
【セミナーレポート】2026年、AI時代の『カート選定』で後悔しないための3つの決定的な評価軸
2026年に開催したセミナー「SaaS、パッケージ、エージェンティック。AI時代の「カート選定」で後悔しないための3つの決定的な評価軸」の記録です。市場の変化と、生き残るブランドに共通する点を扱いました。
はじめに
2026年、AIの波が押し寄せる中で「カート選定」に悩むEC事業者を対象とした主催Webセミナー『SaaS、パッケージ、エージェンティック。2026年、AI時代の「カート選定」で後悔しないための3つの決定的な評価軸』を開催しました。本記事ではその概略をレポートいたします。
セミナー登壇者
- 株式会社メルカート
執行役員
座間 保
株式会社AtoJの創業メンバーとしてAtoJに参画。自らもWEBサービスやコンサルティング会社設立を経て、AtoJのデジタルマーケティング事業責任者としてAtoJに復職。SEO・モール・広告・SNS・GrowthHack領域のデジタルマーケティング支援部署の立上げを行い、AtoJの執行役員兼マーケティング統括責任者に就任。2025年10月 メルカートの分社化に伴い転籍。現在は株式会社メルカートのマーケティングやインサイドセールスの執行役員として従事しています。

本セミナーのゴール
本セミナーのゴールは、「AI時代に備えた新基準のカート選定方法を理解する」ことです。
AIの波が押し寄せてから、1週間ごとにできることが増え続けているような激動の時代の中で、なにかシステムを選定するときに「AIをどう扱えるか」という視点は、もはや無視できない基準になっています。そんな時代の中で、どうやってカートを選定していけばいいのか——そのお悩みをお持ちの方に向けて、AI時代のカート選定についてお話しします。
市場の変化|2026年、ECの当たり前はどう変わったか
新規獲得コストの底上げが加速している
EC市場のトピックとして真っ先に挙がるのが、新規獲得コストの底上げです。
広告費が右肩上がりで成長しており、顧客を一人獲得するコスト(CPA・CPO)が底上げされています。同時に、AIの普及によって「AIに聞けば何でも解決する世の中」が出来上がりつつあり、ECサイトに来てもらう難易度も上がっています。カスタマージャーニー自体が変化し、潜在顧客とのタッチポイントを作ることが難しくなり、リターゲティング広告の効果も低下してきています。
激化するECの顧客争奪戦
広告費は右肩上がりで成長を続けており、特に物販系ECによる出稿や動画広告を中心とした製作費が大幅に増加。顧客一人を呼ぶコストが底上げされている。
= CPA(CPO)悪化
AIに聞けば解決する世の中
AIに情報を聞いて解決することが当たり前になり、SEO対策やコンテンツの強化で、サイトに来させるのも難易度が上がった。
=カスタマージャーニーの変化とリタゲ無効化
「選ばれる」ための最低条件が変わった
このような市場変化の中で、昨今のECにおいて選ばれるための最低条件として浮かび上がっているのが、AIによるパーソナライズの一般化です。AIレコメンドや購買・閲覧履歴に基づいた提案が広く普及し、「自分に合った情報が届くのが当たり前」の時代になってきています。
この背景には、「メンパ」と呼ばれる新しい価値観の台頭があります。情報過多の時代になったことで、自分で選ぶストレスがメンタル的な負荷になり、自分に関係のない情報を瞬時に捨てていく傾向が広まっています。画一的なLINEやメルマガはお客様の期待を裏切り続けることになり、長期的にはLTV(顧客生涯価値)の低下にも直結します。

AIによるパーソナライズの一般化
AIレコメンドなどAIの活用が広まり、購買や閲覧の履歴などから好みに合った提案がされる。自分に合った情報が届くことが当たり前になっており、パーソナライズされていないと不便さを感じるようになっている。
自分に関係ない情報の排除と「メンパ」
情報過多の時代、ユーザーはメッセージを瞬時に取捨選択している。自力で選ぶストレスを避け、最小限の思考エネルギーで正解にたどり着きたいという「メンパ」重視の傾向が加速。パーソナライズされていないLINEやメルマガがユーザーの期待を削り、離脱へと繋がる。
事業者がすべきこと:探す手間をかけずに欲しいものに出会える状態の提供
選ぶことがストレスになっている時代だからこそ、事業者側がすべきことは「自力で選ぶストレスをなくしてあげること」です。最小限のエネルギーで欲しい情報にたどり着けるような状態を提供することが、顧客のメンパを良い状態に保つことにつながります。
検索からの解放
検索窓に頼る必要を排除。キーワードを入力する前に、AIが先回りして提示。
迷いの払拭
膨大な選択肢から選ぶストレスをゼロに。個人の嗜好に絞り込まれた迷わせない商品提案。
受動的な出会い
「たまたま見つけた」をシステムが意図的に創出。顧客が気づいていなかった潜在ニーズを掘り起こす(セレンディピティ)。
変化の中で勝ち残るブランドの共通点
変化の中で勝ち残っているブランドに共通しているのは、「AIの力を借りて一人一人に合ったおもてなしをEC上で実現している」ということです。AIが高速に分析して施策を提案し、One to Oneのコミュニケーションを実現することで、購買体験を継続的に向上させています。
AIが高速分析&施策提案 → One to One のコミュニケーションを実現
サイト内
訪問の瞬間に、その人の悩みに特化した特設バナーを表示
メール/LINE
購入サイクルの予測に基づき、最適なタイミングで提案を配信
レコメンド
閲覧履歴だけでなく買った背景を加味した商品を提示
クーポン
離脱しそうなタイミングで引き止めに最適な特典を提示
例えばメールやLINEであれば、「この方が3ヶ月前に購入して、3ヶ月後ぐらいに再購入するパターンがある」と分析できれば、そのタイミングで「そろそろ商品が切れる頃では?」という案内を送ります。クーポンも、「買い物かごに入れて送料ページで離脱した顧客」には、割引クーポンよりも「送料無料クーポン」の方が刺さる可能性が高いとAIが判断して自動配信する——そういったレベルのOne to One接客が、すでに実現されてきています。
AI時代に求められる3つの評価軸
これまでのカート選定の評価軸:SaaSとパッケージ
これまでのカート選定では、主に「価格」「機能」「拡張性」「操作性」「セキュリティ」という5つの評価軸で検討されてきました。SaaSとパッケージでは、それぞれ以下のような特性があります。
| 評価軸 | SaaS | パッケージ |
|---|---|---|
| 価格 | 初期費用が安く月額課金が基本 | 開発要件によって変動。改修のたびに費用が発生 |
| 機能 | 既存機能+アップデートで自動追加 | 標準機能+独自開発機能(追加費用が必要) |
| 拡張性 | 自動アップデート+ベンダー連携サービス | 自社専用にカスタマイズが可能 |
| 操作性 | 一律の操作感で対応可能 | 専用設計のため複雑になる場合も |
| セキュリティ | ベンダーの基準に依存。自社ルールの適用は限定的 | 自社規定に合わせた管理が可能 |
この評価軸は今後1〜2年は引き続き有効です。しかし、市場が変化している以上、カートの評価軸もアップデートしていかないと、これからの時代についていけません。
市場の変化に伴い、カートの評価軸も変わる
AIの発展により購買体験は変化し、顧客はよりパーソナライズされた提案を求めるようになりました。その体験を精度高く実現できるかどうかは、基盤がAIをフル活用できる状態かどうかで決まります。これまでの評価軸に加えて、新たな視点が必要になります。
| これまでの評価軸 | これからの評価軸(追加) |
|---|---|
| 販促機能・決済手段の豊富さ | AIが全データに直接アクセスできるか |
| 管理画面の使い勝手 | リアルタイムな顧客理解が可能か |
| 外部との連携数 | One to One接客を実現できるか |
| やりたい施策に必要な機能の有無 | 基盤内でAIが主体的に動く設計か(エージェンティック) |
今後は「SaaS」か「パッケージ」かという分類を起点にするのではなく、「エージェンティックな基盤を持っているか」という視点でカートを選ぶ時代になっていきます。SaaSとパッケージの境界線は薄れ、エージェンティックで何を実現したいかを軸に選定していくことが、長期的にリプレイスしないカート選びにつながります。
新たな評価軸「エージェンティック」の3つのチェックポイント
01 データ統合
AIが活用しやすいよう、さまざまなデータが一元管理されているか
02 データ活用
統合されたデータをAIが高度に分析し、施策まで落とし込めるか
03 エージェント
分析結果から施策提案・実行まで、基盤内で完結できるか
エージェンティック基盤とは何か
断片的なデータでは、AIは「一人の人間の顧客像」を捉えられない
AIをフル活用するためには、「整ったデータ」が必要です。しかし現状、多くのEC事業者のデータはバラバラに存在しています。ECシステム・レビューツール・MAツール・サポートデータ——それぞれのデータが結びつかない状態では、顧客像が浮かびません。断片的なデータしかなければ、AIも人間も「一人の人間の顧客像」を正確に捉えることはできず、売るのが博打になってしまいます。

データのサイロ化 → 部分最適にとどまる
ECシステム:購入履歴、累計金額、SKU
レビューツール:満足度、VOC、期待値
MAツール:開封率、クリック、興味関心
サポートデータ:不満・問い合わせ履歴
それぞれのデータが結びつかず、顧客の全体像をとらえた施策にならない
データの統合 → 全体最適
構造化データ:会員情報・行動履歴・購買データ・開封率など
非構造化データ:問い合わせ・クレーム・レビュー・チャット・返品理由
全データをAIが横断分析
「今何に困っていて次に何を欲しがるか」を高い精度かつ秒速で分析することが可能に
「AIが使える」と「AIをフル活用できる」は雲泥の差がある
AIを後付けした状態でも、購買履歴に基づいたレコメンドや設定済みシナリオのチャットボットなど、ある程度のパーソナライズは実現できます。しかし「なんかもう一歩欲しい」という物足りなさが残るのが実態です。エージェンティックな基盤との差は明確です。
AIを後付けした状態
→
過去の購買履歴に基づくレコメンド
→
あらかじめ設定したシナリオのチャットボット
→
外部ツールとして参照できる「一部のデータ」のみ利用
→
合格点のパーソナライズだが、限定されたポテンシャル
エージェンティック(フル活用状態)
→
顧客の文脈を深く理解した画一的でない個人宛の回答
→
サイト内の細かい動きまで汲み取った接客
→
在庫・利益率・全履歴をAIが直接学習
→
「この人はこんな様子だからこの商品」という根拠ある提案
基盤内で動くAIの重要性——外に出せないデータを施策に活かす
重要な観点として、「秘匿性の高い個人情報はGeminiやChatGPTなど外部のAIに渡せない」という問題があります。外部ツールに流してしまうと個人情報の流出リスクが生じるため、実際には使えないデータが多くあります。だからこそ「データ基盤の中でAIが動く」設計が最も重要になってきます。
外に出せないデータを施策に活かせる
基盤内だからこそ外に出せない生データも学習。データ漏洩・学習リスクを排除しながら自社データをフル活用した賢い接客担当を育成できる。
深層心理の可視化
ECに集約されるページ閲覧などの行動履歴や実際の購入履歴を学習。数字に表れない感情を察知し、的確にアプローチできる。
さまざまな施策の提案
AIがさまざまなデータを分析し、適した方法・セグメント・内容などをすぐ実行できる形で提案。全施策を横断的に最適化。
推測のパーソナライズはリピートを阻む
高度なパーソナライズが必要な時代だからこそ、注意が必要な落とし穴があります。データが不十分なまま「それっぽい推測」でパーソナライズしてしまうと、おもてなしではなく不快なノイズになってしまいます。


顧客の行動ストーリーを可視化する
データを一元管理することで、顧客の行動を「点」ではなく「ストーリー」として可視化できるようになります。データが繋がることで迷いや決定理由が可視化でき、一人の顧客の解像度が上がります。その結果から、より効果的なマーケティング施策が実行可能になります。
- 興味のサイン:広告から初来訪/特定の記事を読了/サイト内検索
- 検討のサイン:複数回の再訪/比較表の閲覧/成分表の表示
- 決断のサイン:かご投入/かご落ち/再入荷通知希望
- 継続のサイン:2回目購入/お気に入り登録/レビュー投稿
データ統合とAIが実現する高度なマーケティングサイクル
従来の施策フローでは、「データ抽出・突合」→「顧客分析」→「ターゲティング・施策実行」のプロセスをすべて人の手で行う必要がありました。エージェンティック基盤では、このサイクルがAIによって自律的かつ高速に回り続けます。分析〜施策が高速化することで、空いたリソースをより高度な施策や戦略へ充てることができます。
従来の施策フロー
- 複数ツールからデータを手動で抽出・突合。形式を合わせる手間が発生
- 人間がデータを見て分析し、顧客像を推測。時間と工数がかかる
- 人間が考えた範囲でターゲットを設定して施策を実行
- 結果確認も手動。次の施策への反映までタイムラグが生じる:エージェンティック基盤なら
- 顧客・在庫・行動データ・VOCをEC基盤に集約。データ抽出・突合なしで即時活用可能
- 人の手では不可能だった高度かつ高速な分析をAIが実行。データドリブンな意思決定を的確にサポート
- AIが分析結果から的確なターゲティングを提案し、顧客行動に基づいたマーケティング施策を実行
- 結果をフィードバックして次の施策精度を向上。PDCAが高速で自律的に回り続ける
まとめ|AI時代を勝ち抜くEC運営とは
あらゆるデータが統合され、AIが直接活用できる状態——この構造こそが、AI時代でのECの成功を左右します。
深い顧客理解だからこそできる「刺さる施策」
外部連携による断片的なデータでは、顧客の文脈を読み違え、的外れな接客を招きます。基盤内にすべての情報が統合されているからこそ、AIは顧客の状況や感情までを正確に捉え、心に刺さるおもてなしを完結できます。
人の手では難しい、高度かつ高速な分析
統合によって増えた膨大なデータや、解釈が難しい定性データを分析するのは時間も手間もかかります。AIならあらゆるデータを瞬時に読み解き、高度な分析を高速で行います。
リピーター育成が強化され、広告依存から脱却できる
AIによる高度な分析が高速で回ることで、パーソナライズされた施策の実施は爆発的に増え、リピーター育成が強化されます。新規獲得のための広告依存からの脱却に繋がり、LTVを最大化させ続けるスタイルへと進化できます。
カート選定の評価軸は、従来の軸(価格・機能・拡張性・操作性・セキュリティ)に加えて、「データ統合」「データ活用」「エージェント」という3つの新しい軸を必ず組み込んでください。今のフェーズに合ったカート選びをしていくことが非常に重要です。
ECサイトリニューアルや新規立ち上げ、カート選定に関してお困りごとがございましたら、お気軽にご相談いただければと思います。
NEXT STEP
管理画面で、この施策がどう動くか見られます
実際の管理画面を操作した動画と、施策ごとの進め方をまとめた資料をご用意しています。設定の手間と、運用に必要な体制のイメージがつきます。