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「自社ECだけ伸びない」を抜け出す ― モールと役割を分け、ファンを育てる4つの施策

「数字はきちんと見ている。KPIも把握している。大きな失敗もない。それなのに、自社ECの売上だけが横ばいから動かない」——もしこの状況に心当たりがあるなら、原因は施策の巧拙ではないかもしれません。
ECフェス2026の登壇セッション「自社EC×モール『役割分担』の最適解」では、自社ECが伸び悩む最大の理由を「チャネルの役割分担の欠如」と位置づけました。本記事は、その登壇内容を、時間がない方でも要点をつかめるようにまとめ直したものです。モールと自社ECの役割の違い、自社ECだからこそできる4つのファン化施策、そして施策を実行できる基盤の条件まで、順を追って解説します。
【この記事の要点】
・自社ECが伸びない原因の多くは、施策の失敗ではなく「モールと自社ECの役割を分けていないこと」にあります。モールは発見・比較の場、自社ECは関係を深めファンを育てる場です。
・自社ECだからできるファン化施策は「①ロイヤリティプログラム ②セグメント別配信 ③UGC活用 ④リッチコンテンツ」の4つです。iwakiはUGC経由の購入が売上の10%超を占めるまで成長しました(2026年2月時点)。
・これらの施策が実行できるかは、カート基盤の「①データ統合 ②パーソナライズ ③実行スピード」の3条件で決まります。
なぜ自社ECだけ伸びないのか ― 「モールの劣化版」になっていないか
自社ECが横ばいから抜け出せないとき、原因は個々の施策のミスよりも「モールと同じ売り方をしていること」にあるケースが多くあります。モールと自社ECは、そもそも担うべき役割が違うからです。
モールの本質は「ブランド買い」ではなく「商品買い」です。お客様は「安いから」「ポイントがつくから」という理由で購入し、ブランド名は記憶に残りにくい。次に買うときも、また検索と比較からスタートします。一方の自社ECは、世界観を体験してもらい、顧客データを自社に蓄積し、ファンを育ててLTV(顧客生涯価値)を高めていく場です。
※関連記事: モールECだけでは限界?自社ECを今始めるべき理由
役割が違えば、戦略も施策も変わる
役割が違う以上、同じ運用をしている限り、自社ECは「モールの劣化版」にしかなりません。やりがちなのは、全顧客への一律メール、価格とポイント頼みの訴求、新規獲得広告への予算集中、商品ページだけの作り込みです。これらはモール的な戦略であり、自社ECの強みを消してしまいます。
ファンを育てる自社ECの戦略は、これと正反対です。行動データでセグメントを切って配信し、価格ではなく共感と体験で選ばれ、リピートとLTVの最大化を狙い、ブランドの世界観やストーリーを届けます。同じ「メールを送る」という行為でも、目的と設計がまったく異なります。
理想は「モールは入口、自社ECは深化の場」
モールと自社ECは、どちらかを選ぶものではなく、役割を分業する関係です。モールは新規獲得と認知拡大の「入口」、自社ECは関係を深めてファン化する「深化の場」。モールで広く新規顧客と出会い、初回購入客をファン候補として自社ECへ引き込み、育ったファンのUGC(口コミ投稿)がまた新たな認知に還流する。この循環が回り始めると、チャネル間に相乗効果が生まれます。
今、自社ECをやるべき理由
こんな人におすすめ
・ECサイトの基本を知りたい方
・ECサイトの費用対効果を知りたい方
・ECモールと自社ECの違いを知りたい方
自社ECだからできる「ファンを育てる4つの施策」
役割分担の考え方を踏まえたうえで、自社ECだからこそ実現できる施策を4つに絞って紹介します。「新規顧客の共感獲得 → リピート促進 → ファン化・LTV最大化」という流れで、それぞれが噛み合うように設計されています。
施策① ロイヤリティプログラム ― RFM分析から設計する
ロイヤリティプログラムは、リピートをファン化へ進める仕組みです。モールのポイントは結局「モールへの愛着」を育てるもので、ポイントもデータもモール側に残ります。自社ECのロイヤリティプログラムなら、自社ECで買う動機そのものを設計でき、購買データを自社に蓄積し、ランクや特典を自由に組めます。「ブランドへの愛着」を育てられる点が決定的な違いです。
設計から実行までは3ステップで進めます。まずRFM分析(最終購入日・購入頻度・購入金額の3軸での分類)で「誰がどんな状態か」を把握します。次にランクと特典を決め、「次のランクを目指したくなる」動機をつくります。最後にランク別の施策を実行し、ランクに応じたオファーでファン化を促します。勘ではなく、自社の顧客データを起点に組み立てるのがポイントです。
施策② セグメント別コミュニケーション ― 目標から逆算して配信する
一律のメルマガは、送るほど無視されていきます。全顧客に同じセール情報を送れば、開封率は下がり続け、配信解除が増え、コストだけを浪費します。対して、行動や属性でセグメントを切り、一人ひとりに合うメッセージを届けると、開封率もCVRも大きく変わります。
実行のコツは、セグメントごとに「目標」を定めることです。具体例を挙げます。
| 対象セグメント | 目標 | 配信内容の例 |
|---|---|---|
| 初回購入者 | F2転換(2回目購入) | 購入翌日にお礼と使い方、3日後にブランドストーリー、14日後に2回目限定クーポン |
| 休眠顧客 | 復活促進 | 「お久しぶりです」の声かけ、休眠中の新商品まとめ、期間限定の「お帰りクーポン」 |
| 高LTV顧客 | ファン化 | 新商品の先行販売案内、限定コンテンツや裏話、イベント・モニターへの優先招待 |
セグメントの軸は、性別・年齢・購入商品・累積購入金額・購入回数・最終ログイン日・メール内URLのクリック・RFM分析結果など多岐にわたります。属性と行動実績を掛け合わせて自動作成・自動更新できる環境があれば、運用負荷を抑えながら精度を上げられます。メルカートでは、こうしたセグメント設計をAIとの対話だけで完結させる事業者も増えており、外部MAツールを使わずに作成から配信設定まで進められます。
施策③ UGC活用 ― お客様を主役にして関係性を育てる
UGC(ユーザー生成コンテンツ)は、お客様自身の言葉と暮らしの文脈で語られるコンテンツです。一方通行の販売から、お客様を主役にした双方向の関係構築へ切り替えることで、モールにはないファンが育ちます。流れとしては、SNSでブランドの世界観を発信し、お客様の投稿に共感と対話で応え、その投稿を自社ECに掲載してお客様を主役にし、共感で選ばれるファンを育てていきます。
実践事例が、1883年創業のガラスメーカーAGCテクノグラスの「iwaki」です。初のD2Cへの挑戦で、InstagramのUGCとリアルなレビューを公式EC上にセットで掲載し、購入直前の「迷い」を払拭する仕組みを構築しました。視覚的な雰囲気と、良い点・気になる点の両方を決済直前に提示することで、購入の裏付けにしています。
成果は明確です。指定ハッシュタグの投稿は5,000件に達し、UGC閲覧を経由した購入が売上に占める割合は10%超に成長しました(いずれも2026年2月時点)。UGCとレビューが購入の「迷い」を「確信」に変え、転換率を押し上げた事例です。
施策④ リッチコンテンツ ― 「選び方」で棲み分け、信頼で選ばれる
リッチコンテンツは、売り込みではなく、お客様の悩みに応える専門知で「信頼」を獲得する施策です。出発点は、顧客の選び方による棲み分けにあります。手軽にすぐ買いたい人はモールへ、じっくり悩みを解決して選びたい人は公式ECへ。この棲み分けが、公式ECで「買い続けてもらう」ための土台になります。
たとえば認知フェーズでは「自宅で改善するストレッチ大全」のような役立つ情報で最初の接点と安心感をつくり、比較フェーズでは「専門家が教える介護靴の選び方」のようにプロの知見で「ここなら間違いない」をつくります。商品名のSEOではなく、生活者のリアルな悩みを起点にコンテンツを設計するのがポイントです。
事例として、DIGITAL LIFEが運営する「SONOSAKI LIFE」は、お悩み起点のコンテンツと専門家の解説で信頼を積み上げています。即買いを促すより、理解して選んでもらう姿勢を貫くことで、「ここに来れば必ず解決策がある」という信頼が生まれ、後日の指名買いと比較されない継続購入につながっています。
4施策を「実行できるか」はカート基盤で決まる
ここまでの4施策は、どれも「やりたい」と思って始められるものばかりに見えます。しかし実際に実行できるかどうかは、土台となるカート基盤の性能で決まります。確認すべき条件は3つです。
1つ目は、データが統合されていること。購買・会員・行動のデータが分断されたままでは、セグメント配信もパーソナライズも成立しません。2つ目は、パーソナライズが動くこと。一人ひとりに最適なオファーを自動で届けられる仕組みが必要です。3つ目は、施策実行のスピードが速いこと。思いついた施策をすぐ試し、すぐ改善できる環境かどうかが、施策の打数を左右します。
逆に言えば、この3条件のどれかが欠けていると、施策の質ではなく基盤の制約で打ち手が止まります。たとえば「優良顧客にメールを送りたいだけなのに、セグメント作成に2日かかる」といった状況は、現場でよく聞く悩みです。これはデータとツールが分断されていることから生まれる問題で、データとAIが一体化した基盤であれば、対話一言でセグメントを作成して配信設定まで進められます。施策を考える前に、まず自社のカートがこの3条件を満たしているかを点検することをおすすめします。
メルカートなら4施策を一つの基盤で実行できる
本記事で紹介した4施策は、いずれも「データが統合され、AIが施策実行を支える基盤」があってこそ回ります。メルカートは、購買・会員・行動データやVOC(顧客の声)を一つの基盤に集約し、そこにAIエージェントを一体化させた次世代クラウドECです。
セグメント作成はAIとの対話で完結し、外部MAツールを追加することなく作成から配信まで進められます。ロイヤリティプログラムやステップメール、レコメンドといった機能も標準で備わっているため、4施策を別々のツールに分散させずに一つの管理画面で実行できます。導入企業のEC構築1年後の平均売上成長率は480%で、本記事で紹介したiwakiのUGC活用も、こうした基盤の上で実現されています。
『メルカート』サービス概要資料
こんな人におすすめ
・メルカートのサービス概要を詳しく知りたい方
・機能や料金プランを知りたい方
・一般的なカートシステムとの比較を知りたい方
よくある質問(FAQ)
ここでは、自社ECの役割分担とファン化施策に関するよくある質問とその回答についてまとめました。
Q1: モールと自社ECは、結局どちらに力を入れるべきですか?
A: どちらか一方ではなく、役割を分けて両方を活かすのが基本です。モールは新規顧客との出会いと認知拡大を担う「入口」、自社ECは関係を深めてファンを育てる「深化の場」です。モールで獲得した初回購入客を自社ECへ引き込み、リピーター・ファンに育てる流れをつくることで、両チャネルの相乗効果が生まれます。自社ECにモールと同じ売り方を持ち込むと「モールの劣化版」になり、伸び悩む原因になります。
Q2: ファン化施策は、何から始めるのが効果的ですか?
A: まずはセグメント別のコミュニケーションから着手するのが現実的です。全顧客への一律配信をやめ、「初回購入者のF2転換」「休眠顧客の復活」「高LTV顧客のVIP化」など、対象と目標を絞った配信に切り替えるだけで、開封率やCVRの改善が見込めます。そのうえでロイヤリティプログラムやUGC、リッチコンテンツへと施策を広げていくと、無理なくファン化の循環を組み立てられます。
Q3: 今のカートでファン化施策が実行できるか、どう判断すればよいですか?
A: 「①購買・会員・行動データが統合されているか」「②一人ひとりへのパーソナライズが自動で動くか」「③施策をすぐ試して改善できるスピードがあるか」の3条件で点検してください。セグメント作成に何日もかかる、データが各ツールに分断されている、施策の反映に時間がかかる、といった状況があれば、施策の質以前に基盤が制約になっている可能性があります。施策を考える前に、まず基盤の点検をおすすめします。
まとめ
自社ECが伸び悩む原因の多くは、大きなミスではなく「チャネルの役割分担の欠如」にあります。モールは発見・比較の場、自社ECは関係を深めてファンを育てる場であり、同じ戦略のままでは自社ECの強みは活きません。
自社ECだからこそできるのが、ロイヤリティプログラム・セグメント別配信・UGC活用・リッチコンテンツという4つの施策です。そして、これらを実行できるかどうかは、データ統合・パーソナライズ・実行スピードという3つの基盤条件で決まります。施策のアイデアを増やす前に、まず役割分担を見直し、自社の基盤がその施策に耐えられるかを点検することが、横ばいから抜け出す最初の一歩になります。
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代表取締役渡邉 章公
クラウドECプラットフォーム『メルカート』の立ち上げメンバーとして、2018年のサービスローンチから事業に携わる。2010年よりエンジニアとしてECサイト構築支援に従事し、2016年からSaaS型ECプラットフォーム事業に参画。2018年に新サービス『メルカート』を立ち上げ、2020年に株式会社エートゥジェイの執行役員、2024年に取締役を歴任。2025年の事業分社化に伴い株式会社メルカートの代表取締役社長に就任。現在は中堅・大手企業向けクラウドECとしてメルカートを次世代のCXプラットフォームへと進化させ、事業者と消費者をつなぐ新しい価値の創出を目指している。
専門領域:クラウドEC、ECプラットフォーム、SaaS事業開発、CX、BtoB / D2C / BtoB EC

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