ASPとは?意味や仕組み、SaaS・クラウドとの違いをわかりやすく解説

近年、ECや業務システムの導入形態として「ASP(Application Service Provider)」という言葉を耳にする機会が増えています。しかし、ISP・SaaS・クラウドなど似た概念も多く、違いを正しく理解できていない担当者も少なくありません。

 

本記事では、ASPの概要から、導入するメリット・デメリット、さらにECサイト構築においてASPが適している企業の特徴までを分かりやすく解説します。自社に最適なシステム選定の判断軸を整理したい方は、ぜひ参考にしてください。

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ASPとは

ASP(Application Service Provider)とは、インターネットを経由してソフトウェアやその稼働環境を提供する事業者、またはそのサービス自体を指す言葉です。もともとは「サービス提供者(Provider)」を表していましたが、普及とともに提供されるサービス・ビジネスモデルも含む概念へと拡大していきました。また、ASPという用語は他分野でも使用されるため注意が必要です。

 
  • 広告業界:Affiliate Service Provider(アフィリエイトサービスプロバイダー)
  • IT領域:Active Server Pages(アクティブサーバーページ)
  • 小売業:Average Sales Price(平均販売価格)

など、まったく別の意味で使われるケースがあります。本記事では「Application Service Provider」としてのASPを扱います。

代表的なASPサービスの例

<個人向け>

  • GmailなどのWebメール
  • iCloudやDropboxなどのクラウド・オンラインストレージ
  • コンピューターウイルス対策サービス

<企業向け>

  • グループウェア
  • 勤怠管理、給与管理、在庫管理・生産管理システム
  • 販売管理、財務会計、SFAやMAなどの基幹システム
  • テレビ会議・Web会議、BIツールなど

近年は、企業向けとして提供されてきたシステムがASP化されることで、個人や小規模事業者でも扱えるようになりました。代表例がECサイト構築です。ASPカート(ASP型EC、ASP型ショッピングカート)により、専門知識がなくても短期間・低コストでネットショップを立ち上げられるようになりました。

 

ECサイト分野においてASPで提供されるASPカート例

さらに、ASP同士を連携することで、MAとSFAを組み合わせた高度な顧客分析や営業効率化など、事業全体の生産性向上も実現できます。

ASP型ECカートシステムについて詳しく知りたい方はこちらご覧ください。

ASPの特徴

ASPの主な特長としては以下が挙げられます。

1. 利用が簡単
UI/UXが洗練されているサービスが多く、IT技術者でなくても扱いやすいのが特徴です。操作習得や教育にかかるコストを大幅に削減できます。

 

2. いつでもどこでも利用できる
インターネット環境があれば社内外を問わず利用可能です。外出先からの決裁、タブレットを使った商談など、働き方の柔軟性が向上します。

 

3. 複数デバイス・複数人で利用可能
特定の端末に縛られず、複数デバイス・複数ユーザーで同時利用できます。チーム作業の効率化やリモートワーク環境に適しています。

SaaS・クラウド・ISPとの違い

ASPとよく似た文脈で使われる言葉に「クラウド」「SaaS」「ISP」があります。どれもインターネット経由で提供されるサービスに関わる用語ですが、示す範囲や意味は異なります。ここでは、それぞれの定義とASPとの違いをわかりやすく整理します。

クラウドとは(ASPとの違い)

クラウドとは「クラウドコンピューティング(Cloud Computing)」の略で、インターネット上でサーバー・ストレージ・ソフトウェアなどのコンピュータ資源を利用できる仕組みや環境を指します。このクラウド基盤の上で提供されるサービスは「クラウドサービス」と呼ばれます。

 

ASPを「インターネット経由で提供されるアプリケーションまたはその提供者」と捉える場合、クラウドはそのアプリケーションを提供するための技術や環境であり、より包括的な概念といえます。言い換えると、ASPは「何を提供するか」を示し、「クラウドはどう提供するか」を指す言葉です。

クラウド型ECカートシステムについて詳しく知りたい方はこちらご覧ください。


EC分野での違い

EC業界ではASP型ECとクラウドECが区別されることがあります。

  • ASP型EC:低コスト・短期間で構築できる一方、カスタマイズ性・拡張性には制約がある。事業拡大時には外部連携やシステム移行に追加コストが発生しやすい。
  • クラウドEC:月額費用は高めだが、企業ごとの柔軟なカスタマイズや基幹システム連携が容易。将来的な拡張を考えるとトータルコストで安くなることもある。

クラウドはASPより包括的で、企業の成長戦略に合わせて長期的な選択肢にもなり得ます。

ASPとクラウドECメルカートの長期コスト比較表

クラウドEC「メルカート」と一般的なASPサービスの比較

SaaSとは(ASPとの違い)

SaaS(Software as a Service)とは、クラウド上で提供されるソフトウェアサービスを指します。Microsoft 365、Dropbox、Gmailなどが代表的です。一般的にASPとSaaSはほぼ同義として扱われることが多く、厳密に区別されていないケースもあります。ただし一部ベンダーでは以下のように違いを設けています。

 
  • ASP:シングルテナント(1ユーザーごとに環境を構築)
  • SaaS:マルチテナント(複数ユーザーで同一環境を共有)

そのため、サービス選定時には各ベンダーがどのように用語を定義しているか事前に確認すると誤解を避けられます。

SaaSについて詳しく知りたい方はこちらご覧ください。

ISPとは(ASPとの違い)

ISP(Internet Service Provider)は、インターネット接続サービスを提供する事業者を指します。

 

例:OCN、BIGLOBE、Yahoo!BB など。

 

ISPは「インターネットにつなぐ」ためのサービス提供者であり、ASPは「インターネット経由で提供されるソフトウェア・サービス」に関わる事業者またはサービスという点で役割が大きく異なります。

ASPサービスのメリット

ASPのメリット

 

ASPサービスには、コスト面・運用面・導入スピードなど、多くのメリットがあります。ここではECサイト構築の例も交えながら、主な強みを整理します。

1. 開発コスト・ランニングコストを抑えられる

ASP最大のメリットは、自社でのシステム開発が不要になることです。ゼロからシステムを構築する場合、要件定義・設計・開発・テストなど多くの工程が必要で、初期費用が膨大になります。しかし、ASPはすでに完成したサービスを利用できるため、初期費用を大きく削減できます。

 

また、サーバー維持費やバージョンアップ費などの保守コストも不要なため、継続利用のランニングコストも大幅に抑えられます。無料で利用できるASPもあり、小規模事業者や個人ECにとって導入しやすい選択肢となります。

 

ただし、数年先の拡張性を考えると、クラウドECの方がトータルコストを抑えられる逆転ケースもあるため、中長期的視点での検討が必要です。

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2. メンテナンスの手間がかからない

サーバー管理、セキュリティ対策、システムのバージョンアップ、トラブル対応などのメンテナンスは、すべて提供事業者が担当します。そのため、ユーザー側は専門知識がなくても安心して運用でき、技術者を確保する必要もありません。

 

ASPは複数ユーザー利用を前提としたサービスであるため、セキュリティ対策が十分に施されている場合が多い点もメリットです。定期的なアップデートにより、常に最新機能を利用できます。

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3. 導入までの期間が短い

ASPは開発不要のため、導入スピードが非常に早いのが特徴です。一般的な開発型のシステムでは、要件定義→設計→開発→テストと長い工程が必要ですが、ASPなら完成済みのシステムをそのまま使えるため短期間で導入できます。

 

ECサイトの場合は、テンプレートを選び、商品登録とテストを行えばすぐに販売開始できるなど、ビジネスの立ち上げを迅速に行えます。

 

4. どこでも利用できる(マルチデバイス対応)

ASPはインターネット経由でブラウザ上から操作するため、ソフトウェアをPCにインストールする必要がありません。ネット環境さえあれば、オフィス・在宅・外出先など、どこからでも利用可能です。

 

また、PCだけでなくタブレットやスマートフォンでも操作でき柔軟なワークスタイルに対応できます。

ASPサービスのデメリット

ASPのデメリット

ASPには多くのメリットがある一方、導入前に理解しておくべき注意点やデメリットも存在します。ここでは代表的なポイントを整理します。

1. ネットワーク環境が必須

ASPはクラウド上のデータ・アプリケーションを利用する仕組みのため、インターネット接続がなければ利用できません。そのため以下の点に注意が必要です。

 
  • 通信環境が不安定な地域では動作が不安定になる可能性
  • 災害時や障害発生時にサービスへアクセスできないリスク
  • 利用場所ごとのネットワーク状況を事前確認する必要

また、災害対策として、提供事業者の BCP(事業継続計画) を確認しておくことも重要です。

2. セキュリティ面が提供企業に依存する

ASPではデータ管理・セキュリティ対策は提供会社側の仕組みに依存します。

複数ユーザーが共通サーバーを利用する仕組みである以上、次のようなリスクも考えられます。

 
  • 個人情報・機密情報漏えいの可能性
  • 提供企業の倒産やサービス終了によりシステムが使えなくなるリスク
  • 共有サーバーの脆弱性の影響を受ける可能性

そのため、信頼性の高い企業かどうか、セキュリティ対策が十分かどうかを必ず事前に確認しましょう。また、ユーザー側でも定期的なバックアップを取るなどの対策が必要です。

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3. 機能拡張(カスタマイズ)が難しい

ASPは不特定多数のユーザーが利用する前提で設計されたサービスのため、機能が共通化・一般化されていることが多く、以下のような制約があります。

 
  • 企業ごとの独自業務に合わせたカスタマイズが困難
  • 機能追加や仕様変更に柔軟に対応できない
  • 導入後に外部システムと連携できないなどの問題に気づく場合がある

導入前には 必要な機能・運用フロー・将来的な要件 を明確にし、それらに合致するASPを選定することが不可欠です。

ASPでのECサイト構築が向いている企業は?

ここまではASPの基本的な仕組みやメリット・デメリットを解説してきました。ここからは、EC構築におけるASPカートがどのような企業に適しているのか、また逆に不向きなケースはどんなものなのかを整理していきます。

 

ASPカートの最大の魅力は、初期費用を抑えつつ短期間でECサイトを立ち上げられる点です。この特性から、以下のようなニーズを持つ企業と相性が良いと言えます。

 

ASPカートが向いている企業

  • 初期費用をできるだけ抑えたい企業
  • スピーディーにEC事業をスタートしたい企業
  • 小規模〜中規模でまずはECを試したい事業者

一方で、ASPカートは機能拡張やデザインカスタマイズに制限があり、思い描いたマーケティング施策やブランド表現がしづらい場合があります。また、事業の成長に合わせてクラウドECやパッケージ型に移行する際、多くの追加コストが発生するケースもあります。

 

ASPカートが不向きな企業

  • デザインや機能にこだわり、ブランド表現を強化したい企業
  • 独自のマーケティング施策や高度なカスタマイズを実施したい企業
  • 将来的に大規模なEC事業へ成長させる計画がある企業

ASPカートは「まずECを始めたい企業」にとって非常に有効な手段ですが、長期的な拡張や高度な施策を前提とする企業には適さない場合もあります。事業の方向性と拡張ニーズに応じて選択することが重要です。

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まとめ

ASP(Application Service Provider)は、インターネット経由でソフトウェアを利用できるサービス形態で、初期費用を抑えつつスピーディーにECサイトを構築できる点が大きな魅力です。一方で、カスタマイズ性や拡張性には制約があり、機能追加やブランド表現に限界が生じるケースもあります。

 

クラウドECやパッケージ型との違いを理解し、自社の事業規模・予算・将来計画に最適な方式を選ぶことが重要です。短期的にECを始めたい企業にはASPカートが有力な選択肢となりますが、長期的な成長や高度な施策を見据える場合は他方式との比較検討がおすすめです。

FAQ

Q1. ASPとSaaSの違いは何ですか?

A. ASPは「インターネット経由でソフトウェアを提供する事業者・サービス」を指し、SaaSは「クラウド上のソフトウェアをサービスとして利用する形態」を指します。現在ではほぼ同じ意味で使われることも多いですが、厳密にはASPは提供者寄り、SaaSは提供形態を表す言葉として区別されることがあります。

Q2. ASPを利用する際のデメリットはありますか?

A. ASPは低コスト・短期間で導入できる一方、カスタマイズ性に制限があり、企業独自の機能追加が難しい場合があります。また、サービス提供事業者のサーバーを利用するため、セキュリティやサービス継続性が提供企業に依存する点も注意が必要です。

 

Q3. ECサイトを作る場合、ASPカートはどんな企業に向いていますか?

A. ASPカートは初期費用を抑えたい企業や、できるだけ早くEC事業を立ち上げたい企業に向いています。一方で、独自機能の追加やブランド表現を重視する企業、将来的に大規模ECへ成長させたい企業には、クラウドECやパッケージ型の方が適している場合があります。


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メルカート事業責任者 / 取締役渡邉 章公

2010年に株式会社ecbeingへ入社。エンジニアとして様々なクライアントのECサイト構築支援に従事。2016年よりSaaS型のECプラットフォーム構築に参画し、2018年に新サービス『メルカート』を立ち上げ。2020年にグループ会社のエートゥジェイへ事業と共に転籍し執行役員を務め、2024年に取締役に就任。

渡辺

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