リグレッションテストの意味とは? 目的や実施すべきタイミングなどを解説

システムの開発において、不具合の修正や機能追加によるバージョンアップによるバグを完全に防ぐことは難しいです。そのため、プログラムを変更した際は、何らかの影響が表れていないかを確認する「リグレッションテスト」を行う必要があります。

ここでは、システム開発におけるリグレッションという言葉の意味やデグレーションとの違い、リグレッションテストを実施すべきタイミングなどをご紹介します。

   

リグレッションとは

リグレッション(regression)とは、日本語で「回帰」「後戻り」「後退」といった意味を持つ英単語です。システム開発などのシーンにおいては、修正したバグや不具合が復活したり、ソフトウェアのバージョンアップで機能が低下したりすることを指します。

 

多くのシステムは、さまざまな機能が連携してひとつの要素として成り立っているため、どこか一部分に手を加えた結果、別の場所でバグが発生したり動作不良を起こしたりする恐れがあります。

大きなシステムほど全貌の把握が困難になり、修正した結果不具合が多くなってしまったというケースも珍しくありません。

 

このようなことが起きないように、システムの変更に伴い別の部分に不具合が発生していないかを調べるテストのことを、「リグレッションテスト」「回帰テスト」「ノンデグレードテスト」などと呼びます。

システムやプログラムの改修または変更を行った後は、リグレッションテストを実施することが重要です。

デグレーションとの違い

リグレッションテストと同様に使われる言葉に、「デグレーション(degradation)」があります。これはデグレード(degrade)の名詞形で、日本語では「悪化」や「退化」という意味の言葉です。

例えば、「システムやプログラムの不具合修正によって新たなバグが発生した」「バージョンアップで機能が低下した」といった状態をデグレ―ションと呼びます。

 

例からもわかるように、意味合いとしてはリグレッションとデグレーションはほぼ同じです。しかし日本では、システム改修などによりパフォーマンスが悪化した状態をデグレーションまたはデグレード、デグレーションの有無を調べるテストをリグレッションテストと使い分けられています。

リグレッションテストを行わないリスク

 

システム変更による不具合を確認するために行うリグレッションテストですが、納期や予算の都合などで省略されることもあります。

 

リグレッションテストを行わないと、システムを納品した後に「機能が使えない」「システムの不具合で業務が進まない」といった事態が発生し、顧客が損失を被るケースも考えられます。このような場合、顧客からの自社に対する信頼感が失われるのは簡単に想像できるでしょう。

 

また、デグレーションが発生したシステムは再改修が必要になるため、結果として更なる工数とコストが発生します。無駄なコストをかけないためにも、リグレッションテストはシステム開発において欠かせない工程といえるでしょう。

リグレッションテストを実施すべきタイミング

一般的なシステム開発の場合、部分ごとにプログラムを作成して単体でテストを行い、いくつかの部分を連結して行う連結テスト、統合テスト、運用テストと移っていきます。

 

リグレッションテストを行うタイミングとしては、それぞれのテストを行った後やバグ発生時、不具合修正後が最適です。テストで不具合があった場合は修正し、再度テストを行って不具合がないかどうかを確認します。

テスト工程の段階でリグレッションテストを行うことで、不具合やバグを早期に発見し、適切に修正できるようになります。

リグレッションテストの範囲を決めるポイント

リグレッションテストはシステム開発において重要な工程ですが、効率的に開発を進めるためにはテストを行う範囲を決めておく必要があります。

リグレッションテストを実施する範囲を決める際のポイントを3つご紹介します。

影響範囲の把握

範囲を決めず、すべてのテストを最初から行うことを「フルリグレッションテスト」と呼びます。この方法では確実に不具合やバグを取り除けますが、バグや不具合を修正する度に行っていては非効率です。

 

効率良く開発を行うためには、バグや不具合が影響する場所を把握し、リグレッションテストを行う範囲を一定まで絞り込むことが重要です。

リスクの把握

変更した箇所がどれくらいシステムに影響を及ぼすかによって、デグレーションのリスクは変化します。例えば、ごく一部の限られた機能に変更を加えるだけの場合、デグレーションのリスクは低いです。逆に、システムの基盤となるような箇所を変更した場合は、リスクが大きくなります。

 

変更によって不具合が生じた場合、どれくらいのリスクがあるのかを把握しておくことで、リグレッションテストの範囲を決めやすくなります。

テストの優先度

納期まで時間がない場合、必要なテスト範囲すべてにリグレッションテストを行うのは難しいでしょう。そのような場合はデータを確認し、過去の不具合発生傾向に基づいて、テストの優先度を決める必要があります。

 

もちろん、本来はテスト範囲を絞らずにリグレッションテストを行うのが理想です。しかしそれが不可能な場合は、優先度が高い箇所からテストを実施し、少ない時間の中でテストの確度を高めていくことが、現実的な解決策となります。

リグレッションテストは自動化するのもおすすめ

 

リグレッションテストは、ツールを活用して自動化し、テスト実施時のコストや工数を削減することができます。自動化ツールでは継続的にテストを実施するため、不具合を早期に発見でき、修正が難しくなる前に対処しやすい点もメリットです。

 

単体テストや保守テスト、バグ修正ごとに行うテストなど、同じテストを何度も繰り返したり、多くのデータを入力したりする必要があるテストは自動化に向いているといえます。

 

ただし、リグレッションテストの自動化ツールは、ある程度システム開発を進めた段階でしか導入できません。初期段階からツールを使えることはできず、導入にコストがかかるというデメリットがあります。

導入に際しては、自動化ツールによってコストや工数を削減できるかを判断することが重要です。

リグレッションテストは欠かせない業務のひとつ

リグレッションテストは、納品後の動作不良や不具合といったトラブルを回避するための重要な工程です。しかし、納期や予算の都合から省略されてしまうことも多い業務でもあります。

顧客からの信頼を失わないために、ツールを活用してリグレッションテストを自動化するなどして、効率的にテストを行える環境を作るようにしましょう。


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メルカート事業責任者 / 執行役員渡邉 章公

2010年に株式会社ecbeingへ入社。エンジニアとして様々なクライアントのECサイト構築支援に従事。2016年よりSaaS型のECプラットフォーム構築に参画し、2018年に新サービス『メルカート』を立ち上げ。2020年にグループ会社のエートゥジェイへ事業と共に転籍し、執行役員に就任。

渡辺

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