プロビジョニングはどんな意味? 概要や種類をわかりやすく解説

ITの世界において、「プロビジョニング」という言葉を耳にしたことがある方は多いでしょう。しかし、プロビジョニングは非常に多くの用途で使われているため、具体的にどのような意味の言葉なのかを把握しづらいかもしれません。

そこで今回は、プロビジョニングの概要や種類の具体例、シン・プロビジョニングという概念についてもご紹介します。

   

プロビジョニングの意味とは

プロビジョニング(provisioning)とは、「供給」「準備」「対策」などといった意味を持つ「provision」という英語に由来する言葉です。軍隊や長期間の旅行・航海などで、食料や水といった必要物資を用意または補給することなどが、プロビジョニングの一例です。

 

IT分野においては、「ユーザーに設備やサービスをすぐ提供できるように準備すること」を意味して使用されます。

一方で、プロビジョニングしたものを元の状態に戻すことは「デプロビジョニング」と呼ばれます。

 

もともと通信分野では広く使われていた言葉で、回線設備などを事前に準備し、顧客の申し込みが済んだ後すぐにネットワークを提供できるようにすることを意味していました。

その後、他の分野でもプロビジョニングという言葉が使われるようになり、現在はサーバーやストレージなど、広いシーンでプロビジョニングの概念が広がっています。

プロビジョニングの種類

プロビジョニングは、提供するサービスなどによって使われ方が少し異なります。代表的なプロビジョニングの種類と、それぞれの言葉の持つ意味をご紹介します。

 

ユーザープロビジョニング

ユーザープロビジョニングは、「アカウントプロビジョニング」や「IDプロビジョニング」と呼ばれることもあります。

具体的には、会員登録をして利用する各種システムやアプリケーション、インターネットサイトにおけるアカウントの作成や保守、削除など、アカウント管理に関わる作業のことです。

サービスプロビジョニング

ISP(インターネット・サービス・プロバイダ)と呼ばれるインターネット接続事業者が、ユーザー向けにサービスを提供したり設定したりすることを指します。

メールやHTTPS、FTP、DNSサーバーの設定が一例で、インターネット回線の契約後に送られてくるメールアドレスやパスワードなどもサービスプロビジョニングに含まれます。

サーバープロビジョニング

OSやソフトウェアの導入、各種システムの設定、サーバーの割り当てなど、サーバーが運用できるようになるまでの作業全般が、サーバープロビジョニングです。

また、運用しているサーバーの設定変更やシステム障害が発生した際に行う復旧作業なども、サーバープロビジョニングの一環です。

携帯端末でも使われるプロビジョニング

スマートフォンの普及に伴い、携帯端末に関してもプロビジョニングという言葉が使われてきています。

Appleの提供するiOS端末で、App Store以外のアプリを使用するために使われる「プロビジョニングプロファイル」というバイナリファイルや、通信事業者が携帯端末契約者に行う「サブスクライバープロビジョニング」などがその一例です。

ストレージを仮想化する「シン・プロビジョニング」

ビジネスシーンで取り扱う情報量が増加した近年は、「シン・プロビジョニング」という技術が普及を進めています。シンは「薄い」という意味を持つ英単語「Thin」が由来で、シン・プロビジョニングとは、ストレージの容量を仮想化して空き容量を有効活用するための技術のことです。

 

従来のストレージでは、利用者が求める数値に対して、該当する容量を物理的に割り当てていました。しかし、ストレージの実際の使用量は求めていた数値の2、3割というケースがほとんどです。

 

つまり、仮に5TBの容量をストレージとして求めていたとしても、実際には1TB程度しか利用されていないことになります。とはいえ、サーバーが要求した容量を割り当てないとストレージとして認識されないため、5TBの割り当てが必要です。

割り当てられた5TBはストレージ以外に利用できないため、上記の例では4TBもの容量がデッドスペースになってしまいます。

 

この容量の無駄遣いをなくすための技術がシン・プロビジョニングです。5TBのストレージを要求した際に、実際にストレージとして使用する1TB容量のみを物理的に割り当て、残りの4TBには仮想化した容量を割り当てています。

シン・プロビジョニング導入による効果

物理的な容量は実際に使用する容量にのみ割り当て、残りの容量は仮想化して割り当てるシン・プロビジョニング技術を活用すれば、物理的な無駄がなくなり、ストレージの効率化につながります。

 

仮に使用する容量が増えたとしても、増えた分だけ仮想化してあるストレージから物理的に容量を割り当てられるため、需要の変化に合わせた柔軟な運用が可能です。

また、実際に使用する物理容量そのものも減らせるため、ストレージにかかる費用やディスクの稼働による消費電力を減らせるというメリットもあります。

 

「iCloud」や「Googleドライブ」など、近年はオンラインストレージ(クラウドストレージ)をはじめとしたクラウドサービスが多く提供されています。クラウドサービスにおいて、容量を仮想化して使用するシン・プロビジョニングの技術は大きな貢献を果たしているのです。

シン・プロビジョニングの注意点

シン・プロビジョニングでは、実際には使用していないストレージを仮想化することで物理的な容量を抑えていますが、サーバーが要求する容量が実際の物理的な容量を超えた場合は、データを処理できない恐れがあります。

 

例えば、5TBの物理容量しか用意していない場合は、当たり前ですが5TBまでしか使用できません。データを処理できない事態に陥らないためには、一定の「しきい値」を定めておき、数値を超えたら通知が来るような機能を設けておくと良いでしょう。

要求容量が増えてしきい値を超えた場合は、ディスクを増設して対処する必要があります。

 

また、シン・プロビジョニングはあくまでもストレージを効率的に運用するシステムで、データの容量そのものを削減するシステムではありません。シン・プロビジョニングを導入したとしても、使用するデータ量は日々増えていくもので、要求されるストレージ容量も比例して増加します。

 

仮にデータの容量を圧縮したい、削減したいという場合は、データ圧縮機能などの機能が必要です。データ量を削減することでストレージを有効活用したいという場合は、シン・プロビジョニング以外の機能にも着目してみてください。

時代に合わせて進化を続けるプロビジョニング

従来では通信分野で広く使われていたプロビジョニングという言葉ですが、技術の発展に伴い、現在は多くの分野で使われるようになりました。特にストレージ容量を仮想化するシン・プロビジョニングは、クラウドサービスを活用するうえでは欠かすことができない技術といえるでしょう。

 

ストレージの無駄を省いて効率的に運用したい、物理的なディスクドライブを減らして、運用の負担を減らしたいという場合は、シン・プロビジョニングの導入を検討してみてはいかがでしょうか。


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メルカート事業責任者 / 執行役員渡邉 章公

2010年に株式会社ecbeingへ入社。エンジニアとして様々なクライアントのECサイト構築支援に従事。2016年よりSaaS型のECプラットフォーム構築に参画し、2018年に新サービス『メルカート』を立ち上げ。2020年にグループ会社のエートゥジェイへ事業と共に転籍し、執行役員に就任。

渡辺

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