本記事は、2025年10月15日(水)に開催された「株式会社メルカート分社化 説明会」の内容をまとめた記事です。株式会社メルカートは2025年10月1日、株式会社エートゥジェイからの分社化により新たなスタートを切りました。
はじめに

私たちのミッションは「“買い物” を、もっと楽しく、____」です。利便性を極めるECモールとは異なり、自社ECが提供すべき価値は、ブランドの世界観と顧客の感情をつなぎ、発見が生まれる楽しさを設計することにあります。
だからこそ、人・物・システムに宿る感情を丁寧に捉え、それを双方向に伝わる体験へと翻訳することを重視しています。新会社として私たちはロゴとミッション・ビジョン・バリューを刷新し、パーソナライズCXプラットフォームを中核に据えます。
分社化の背景・目的

メルカートの始まりは、2016年にグループとして初めて立ち上げた「ecbeing」のSaaSモデルにあります。当初は、常に最新の状態を保つ「アップデート性」を強みとするSaaSと、高い自由度を持つ「システム開発」を両立させたハイブリッドモデルでした。その後、市場の非常に速い成長スピードを捉え、機能アップデートの価値を最大限高めるために、完全なSaaSモデルへと転換しました。
2020年には、株式会社エートゥジェイへ事業を移管し、メルカートは「システム」と「マーケティング」を掛け合わせた新しい支援モデルへと発展しました。2024年には基盤を全面的に刷新し、開発スピードは当初の100倍へと向上。SaaS企業としての基盤と柔軟性を大きく高め、より多くの事業者に選ばれるプラットフォームへと進化しました。
今回の分社化は、これまでの進化をさらに加速させるための、次のステップです。意思決定を迅速化し、変化の速い市場にスピーディに対応するため、パッケージ型ECの「ecbeing」とSaaS型ECの「メルカート」がそれぞれの強みを活かし、ホールディングス全体として事業者の課題に最適なソリューションを提供できる体制を整えました。
この分社化の目的は大きく三つあります。第一に、柔軟で機動力のあるプロダクト体制を確立すること。第二に、ブランドと消費者をつなぐ顧客体験(CX)の創造に注力すること。そして第三に、EC業界をリードする新たな価値を生み出すことです。
メルカートは「“買い物” を、もっと楽しく、____」というミッションを掲げ、テクノロジーの力でブランドと消費者の関係をより深く、自然につながり続けるものへと進化させていきます。
メルカートの事業戦略

昨今、消費者の購買行動は「探す」から「出会う」へと変化しつつあります。私たちは会員や購買などの構造化データに、SNS発信やレビュー、問い合わせといった非構造化データを重ね、独自のインテリジェンスエンジンで可視化・活用します。
分断しがちなSaaS間のデータを横断させることで、「売る力(Commerce)」と「心をつかむ力(Experience)」を同時に高め、少人数でも運用が回る基盤を提供します。
これまで、API公開やノーコードCMS、AIレコメンド、店舗とECをつなぐOMO連携を進め、多チャネルの顧客理解とCRMを実装レベルで支援してきました。今後は、この基盤を土台にデータウェアハウスを中心とした情報統合を進めていきます。そして、AIエージェントによるエージェント同士の連携を見据え、事業者と消費者双方にとってより直感的で負担の少ない体験を実現していきます。
メルカートのロードマップ

メルカートのこれからの成長は、4つの段階を描いて進んでいきます。
基盤構築フェーズ
パーソナライズされたCX(顧客体験)を実現するための基盤づくりを進めます。これまでに整えてきたシステムやデータ構造をさらに磨き上げ、顧客一人ひとりの行動や嗜好を的確に捉えられるプラットフォームを整備していきます。このフェーズでは「個別対応を仕組み化する」ことが目的であり、メルカートの今後を支える土台となります。
非構造化データ活用フェーズ
これまで主に扱ってきた購買履歴や会員情報といった数値データに加えて、SNSの投稿内容やレビュー、問い合わせの言葉といった“人の感情が現れるデータ”を分析に取り入れていきます。感情と行動の両面から顧客を理解することで、より深い体験設計が可能になります。
パーソナライズCXプラットフォームの実現フェーズ
「構造化データ」と「非構造化データ」を活用しながら、ユーザーがブランドとの関係性を一体的に感じられる「One to OneのCX」の実現を目指します。これは単にパーソナライズを高度化するだけでなく、事業者と消費者が双方向で価値をつくりあげる新しい購買体験を意味します。サイト上の体験やコミュニケーションがひとつの流れとしてつながり、買い物そのものが心地よい体験になることを理想としています。
Agent to Agent CXプラットフォームの実現フェーズ
最後には、AIエージェントを活用したA to A(Agent to Agent)コマースの実現を目指します。これは、消費者側と事業者側、それぞれのAIエージェントが連携し、最適な提案やサポートを自動的に行う仕組みです。例えば、ユーザーの好みをAIが把握し、ブランドのAIと対話しながら最適な商品を提示するような、より自然でシームレスな購買体験の世界を描いています。こうした構想を通じて、メルカートは「探す」から「出会う」、そして「繋がり続ける」ECの未来を形にしていきます。
さいごに

今回の分社化は、メルカートがこれまで培ってきた経験と技術を、より自由でスピーディに進化させるための大きな節目です。ECの世界は今、AIやデータの活用によって急速に変化しています。だからこそ、テクノロジーの進化に柔軟に対応しながら、ブランドと消費者がつながり続けるための「体験」を形にすることが重要です。
私たちは、買い物を単に利便性の追求にとどめず、心が動く瞬間を生み出すことを目指しています。お客様、事業者、そして当社自身が、同じ熱量で共創できるECの未来を創造すること。それが、メルカートが挑戦し続ける理由です。


